ADHDは遺伝するもの?
結論からいうと、ADHDはきわめて遺伝しやすいといえます。実際に、親がADHDの場合、そうでない子どもと比較して、5~10倍高い確率でADHDを発症すると言われています。研究結果では、平均70%の確率で遺伝するという報告も。もちろん、ADHDの発症は、生物学的な遺伝だけでなく、その他の環境要因もあるので、その点も解説していきます。
ADHDの遺伝要因と環境要因
ADHDの発症に直接かかわる遺伝子は未解明
特定の遺伝子がADHD発症の要因となっている可能性はあるようですが、現在はまだその遺伝子の発見には至っていません。ただし、発症に関連性のある遺伝子として指摘されているものはいくつか存在します。次のとおりです。
- DRD4・DRD5・SLC6A3(ドーパミン関連受容体およびトランスポーター)
- HTR1B・SLC6A4(セロトニン受容体およびトランスポーター)
- SNAP-25・SLC9A9・NOS1・LPHN3・GIT1・NOS1(シナプス関連蛋白関連遺伝子)
ADHDの薬物療法による効果を検証した結果からわかるのは、ドーパミンをはじめとするモノアミンの関連が濃厚だとする識者が、かなり多いようです。
ADHD発症の環境要因とは
ADHDにかかわる特異的遺伝が存在していても、遺伝要因のみで発症するわけではなく、その他多くの環境要因が加わった結果、発症につながります。これは、家族の誰かがADHDであった場合でも、他の家族がADHDを発症しないケースがあることからもわかります。
それでは、遺伝以外の要因である「環境要因」とは具体的には何を指しているのでしょうか。主な要因としては、次のようなものがあげられます。
- 周産期歴(例:未熟児・母体内感染症 その他)
- 合併症(例:学習障害・てんかん・アレルギー・自閉症 その他)
- 療育環境(例:喫煙者の有無・経済状況・ネグレクト・虐待・健診受診歴・予防接種歴 その他)
早めの相談が大切
このように、子どものADHD発症の原因は、単一的なものではなく、多岐にわたる要因の中からいくつかが組み合わさることで発症すると考えられています。ADHDの症状がみられる場合には、できるだけ早急に専門家に相談し、適切なケアを受けるようにしましょう。また、ADHDと上手につきあいながら社会生活を送るためにも、地域の発達障害支援センターなどの積極的な利用をおすすめします。