学習障害の子どもの勉強方法はどうする?
学習障害をもつ子どもは、どのように勉強を進めていけばよいのでしょうか。学習障害の種類に応じた勉強方法について、確認していきましょう。
学習障害には種類がある
学習障害にはいくつかの種類があり、その現れ方は子どもによって異なります。その種類と特徴に応じた、適切な勉強方法を取り入れることが大切です。
ここでは、主な学習障害の種類を3つ紹介します。必ずしも「どれか1つだけに該当する」とは限らず、複数の種類の障害を併せ持つこともある点も念頭に置いておきましょう。
読字障害(ディスレクシア)
学習障害のなかで、主に「読むこと」に障害がある場合を読字障害(ディスレクシア)と呼びます。
文字と発音を結び付ける「音韻処理」に障害があり、文字を読んで発音したり、発音された言葉を文字に変換したりすることが苦手です。
また、文字の形を認識する「視覚情報処理」が苦手で、文字を見てもゆがんで見えたり、浮かび上がって見えたりなど、普通とは違った見え方になり、正しく認識するが難しいという場合もあります。
このような場合、文字を読むだけでなく「書くこと」に影響することが多いため、ディスレクシアは「読み書き障害」と呼ばれることもあるのです。
書字障害(ディスグラフィア)
文字を「書くこと」に障害がある場合を、書字障害(ディスグラフィア)と呼びます。文字を読むことや理解することには問題がないのに、「書くこと」が苦手という場合です。
障害の現れ方は子どもによって異なりますが、「年齢に応じた漢字を書けない」「文字に余分な線や点を加えてしまう」などの形で現れるとされています。
ディスグラフィアだけを持っている場合、日常生活に大きな影響がないことが多く、大人になるまで気が付かないケースもあります。ただし、文字を書くことに障害が発生する原因は、ディスグラフィアとは限りません。「空間認識力」が低いことや、「発達性協調運動障害」によって指を動かす機能に障害がある可能性も考えられます。
算数障害(ディスカリキュリア)
計算や推論などに関する学習障害のことを、算数障害(ディスカリキュリア)と呼びます。
数についての理解が著しく低く、算数で使う基本的な記号を理解できなかったり、簡単な文章問題を解けなかったりするケースです。
幼少期には、「数の大小の区別をつけるのが苦手」「繰り上がり・繰り下がりについての理解が難しい」などの傾向が現れることがあります。
幼少期には障害が現れず、中学校に上がって急に問題が解けなくなってしまう場合もあり、子どもによって現れ方はさまざま。算数が苦手な子どもの全てがディスカリキュリアとは限らないので、早まった判断をしないことが大切です。
学習障害の勉強方法とは
学習障害の種類ごとに、どのような勉強方法をすればよいのでしょうか。全ての子どもに有効であるとは限りませんが、工夫できるポイントを参考にしてみてください。
読字障害の子どもの勉強方法
読字障害(ディスレクシア)のある子どもの勉強方法は、「文字を見やすくする工夫」が大切だとされています。読む範囲以外を隠したり、大切な部分だけに色を付けたりなどの工夫です。文字を大きく印刷したり、フォントの形を変えたりすることで、読みやすくなる場合もあります。
また、フリガナをふったり、文章のまとまりをスラッシュで区切ったりすることで、文字の理解を助けられる可能性もあります。どのようにすれば読みやすいのかは、その子によって異なるので、様子を見ながら工夫していきましょう。
また「文字だけに頼らない」ことも大切です。読字障害があっても、言葉を「音として聞いて理解する」ことに問題がない場合もあります。文字を読めるようにすることばかりに集中して、他の学習がおろそかにならないように、耳から聞いて学習させることも活用してみましょう。教科書の朗読を聞きながら、教科書の文字も同時に見ていくことで、読めるようになってくる場合もあります。
書字障害の子どもの勉強方法
書字障害(ディスグラフィア)については、障害の現れ方が人によってさまざまです。「どのようなことが苦手なのか」「どんなことに困っているか」に合わせて、その子にあった工夫をしてみましょう。
例えば「鏡文字」を書いてしまう場合、左右に関する認識を深めることが有効である場合があります。日頃から「右」「左」という言葉を使って接するようにし、文字を書く際にもその点を意識して教えることで改善するかもしれません。
「読めるのに書けない」という場合、文字の形を覚えることに問題がある可能性があります。文字の形を覚えやすくするイラストや、漢字の「へん」や「つくり」を組み合わせるパズルなどを使って、楽しみながら形を覚えられる工夫が有効かもしれません。「わ」と「れ」など形が似ている文字は、どこが違うのか、色などを付けて強調することで覚えやすくなるでしょう。
算数障害の子どもの勉強方法
算数障害(ディスカリキュリア)があって算数の学習が困難である場合、「算数の記号以外」の情報を使ってサポートすることが有効になる可能性があります。
「+」や「-」などの記号に〇を付けて強調したり、上部に「たしざん」「ひきざん」などのフリガナを書いたりなどの方法で、算数の記号を理解しやすくサポートします。
文章問題は、ヒントを出してあげながら、「できた」「分かった」という達成感を得られるようにすることも大切です。少しずつヒントの量を減らしていくことで、ヒントなしでも解けるように導いていきます。
予習や復習を十分に行うことで、学校の学習から遅れてしまわないようにすることも重要です。
学習障害の子どもへの接し方・注意点
最後に、学習障害の子どもの勉強を進めていくうえで、大切なこと、気を付けるべきポイントを3つ解説します。
1.他の子どもと比較しない
学習障害のある子どもを、他の子どもと比較しないようにしましょう。
学習障害の子どもは、できないことや苦手なことがあっても、それ以外のことは普通にできる場合が多くあります。大人になるまで自分に学習障害があると気が付かないほど、普通に生活するケースも珍しくありません。得意な分野については、優れた成績を修めることもできるでしょう。
誰にでも苦手な分野はあるものです。学習障害のある子どもを、「他の子どもより劣っている」などと考えないようにしてください。
2.達成感を与えるように工夫する
学習障害のある子どもが勉強を続けていくモチベーションを保つために、「達成感」が重要な意味を持っています。
本人がやる気を失ってしまえば、本来はできるはずの他の分野の勉強も含めて、全ての学習が滞ってしまうことにもなりかねません。不登校の問題が発生すると、さらに深刻化していきます。
「勉強は嫌だ」「自分はできない」と感じさせないように勉強を進めることが大切です。そのために、本人が「達成感」を得られるように工夫しましょう。
そのためにも、「簡単な目標」「短期間で達成できる目標」を設定して、ひとつずつクリアしていくことが大切です。難しすぎる目標や、長期的すぎる目標を設定してしまうと、なかなか達成感を得られないでしょう。
小さな目標をいくつも達成していくことで、段階的に長期的な目標を達成するのが基本だとされています。
また、目標を達成したら、褒めることも忘れないようにしましょう。達成できなかったとしても、他の得意なことで褒めてあげるなど、本人のモチベーションを保つための工夫が大切です。
3.周囲のサポート体制を整える
家庭だけで学習障害のある子どもをサポートするのは難しいことがあります。学校の先生など、子どもと接する大人と十分なコミュニケーションを図り、周囲のサポート体制を整えることも大切です。
学校に丸投げするだけでは、学校側も十分な対応ができないことがあります。子どもは、どんなことが苦手で、どんなことは得意なのか、どんなことに注意してほしいのかなど、情報共有が大切です。日常で子どもに接する大人たちが、十分な理解のもとサポートできる環境を作っていきましょう。