文章がおかしいのは発達障害?
子どもが書く日記や作文を見て、「主語がなくて意味が分からない」「助詞(てにをは)がめちゃくちゃ」「何度教えても同じ間違いをする」と不安を感じている方へ。それは子どもの「努力不足」ではなく、情報の処理の仕方に特性がある「発達障害」のサインである可能性があります。
本記事では、発達障害かどうか見分けるポイント、発達障害のタイプごとに相性が良い指導法・合わない指導法を解説しているので、参考にしてみてください。
「ただの作文嫌い」と「発達障害」を見分けるには?
作文を苦手とする子どもは一般的に多いものですが、発達障害が背景にある場合は、練習量を増やしても成果につながりにくい傾向が見られることがあります。
医師でない限り厳密な判断はできませんが、「口で話すと流暢に説明できるのに、書くと極端に幼い文章になる」「漢字の書き取りを何度繰り返しても定着しない」といった、書くことに限ったアンバランスさが続く場合は、学習方法が合っていない可能性を考える一つの目安になります。
3つの特性から考える発達障害の可能性と指導方法
「書くことだけがうまくいかない」状態は、努力不足や知的な問題ではなく、情報の処理の仕方に個人差があることで起こる場合があります。
発達障害の特性は一つに限られるものではなく、複数の傾向が重なって見られることも少なくありません。ここからは、文章を書く場面でつまずきやすい代表的な3つの特性と、相性が良い・悪い指導方法について見ていきましょう。
1.文字を書くこと自体が苦痛なタイプ【SLD(限局性学習症)の可能性】
話していると普通なのに、文字を書くと大きさや形がバラバラになる、原稿用紙の枠に収まらない、黒板の板書に異常な時間がかかるなどのタイプです。
知能全般の遅れはなく、特定の学習だけを苦手とするのがSLDの特性。大きく分けて3つの種類(読字障害・書字障害・算数障害)があり、書くのが苦手な子どもは書字障害(ディスグラフィア)の可能性が高いでしょう。
「文字の形を頭でイメージし、それを手で再現する」という処理が極端に苦手なため、文章の中身を考える以前に、文字を書く作業だけで脳のスタミナを使い果たしてしまいます。
相性が悪い指導:「何度も書いて体に覚えさせる」
漢字練習帳を何ページも埋めさせるような反復練習は避けるべきです。書字障害の子どもにとって文字を書くことは、見えない文字を暗闇で探るような重労働であるため、ただ回数を重ねても正しい形は定着しません。
むしろ、書くことへの苦痛と拒否感だけが強まり、学習意欲そのものを失わせてしまうリスクがあります。
相性が良い指導:「書く負担を減らし、理屈で形を覚える」
視覚的なイメージだけに頼らず、「言葉」で文字の形を補助する方法が有効です。例えば、漢字を「横、縦、閉じる」と口に出して唱えながら書いたり、パーツごとのパズルとして捉えたりすることで、苦手な視覚処理を補えます。
「手書き」にこだわらず、タブレットや音声入力を活用するのも有効です。本来持っている豊かな表現力を発揮できるようになります。
2.相手に伝わる表現が苦手なタイプ【ASD(自閉スペクトラム症)の可能性】
文章の文法は合っているのに、「誰が」という主語が抜けたり、独自のマイルールに基づいた言葉使いが多かったりして、読み手に伝わらないタイプです。
ASDの特性である「相手の視点に立つことの難しさ」が影響している可能性があります。自分に見えている世界は相手も知っているという前提で書いてしまうため、説明不足で唐突な文章になりがちです。
相性が悪い指導:「相手の気持ちになって書いてごらん」
ASDの特性を持つ子どもに「読み手がどう思うか想像して」という抽象的なアドバイスは効果が薄く、むしろ混乱を招く可能性もあるので避けましょう。
ASDの子どもは、他者の視点を想像すること自体に困難を抱えているため、「自由に書いていいよ」と言われると何を書けば正解なのか分からずフリーズするか、自分の興味のある事実だけを羅列してしまいます。
相性が良い指導:「型とルールで文章を組み立てる」
「想像」させるのではなく、明確な「型」や「ルール」を提示する指導が適しています。「いつ・どこで・誰が・どうした」という5W1Hの枠を用意し、そこに事実をパズルのように当てはめていく練習をすることで、論理的な文章が書けるようになるでしょう。
独自の表現が出た際は否定せず、「それは〇〇という意味?」と具体的に聞き返し、万人に伝わる言葉へ翻訳する手伝いをしてあげてください。
3.書き飛ばしが多いタイプ【ADHD(注意欠如・多動症)の可能性】
文章の途中で話が全く違う方向へ飛んだり、助詞や文字の一部を書き飛ばしたりするケアレスミスが多いタイプです。
頭の中で次々に新しいアイデアが浮かぶスピードに、手書きのスピードが追いつかないというADHD(注意欠如・多動症)の特性が影響している可能性があります。
一時的に情報を記憶する「ワーキングメモリ」の弱さから、書こうとしていたことを途中で忘れてしまうことも原因の一つです。
相性が悪い指導:「最後まで一気に書かせ、ミスを細かく修正する」
長い作文を一気に仕上げさせようとしたり、誤字脱字をその都度細かく指摘したりする指導は、ADHDの子どものやる気を削いでしまいます。
思考のスピードを止められることにストレスを感じ、集中力が切れてしまうためです。さらに注意される回数が増えるほど「自分は書くのがダメだ」と自信を失ってしまいます。
相性が良い指導:「話して整理し、短く区切って書く」
「考える時間」と「書く時間」を分けることが重要です。書き始める前に、何を書くか口頭で話してもらい、大人がメモを取って構成を作ってから書き出すことで、話の脱線を防げます。
ワーキングメモリの負担を減らすために、長い文章ではなく短い文を積み重ねる形式にしたり、指で文字を追いながら読み返す習慣をつけたりすることも有効です。
診断の有無に関わらず「特性」と受け止めることが大切
「うちの子に当てはまるかもしれない」と感じたとき、多くの親御さんは「これからどうなってしまうのか」と不安を感じるでしょう。しかし、文章がおかしいのは子どもの能力が低いからではなく、現在の学習方法が「脳のクセ」に合っていないだけです。
もし日常生活でも困りごとが多い場合は、お住まいの地域の「発達支援センター」や専門の医療機関へ相談し、アセスメント(検査)を受けることも一つの選択肢。診断名が付くかどうかよりも大切なのは、「何が原因でつまずいているのか」という子どもの特性を正しく理解することにあります。
家庭ではまず、以下の3つのステップを意識してみてください。
- 「書けない」を責めない:本人なりに全力で取り組んでいることを認め、安心感を与えます。
- 成功体験を優先する:長文にこだわらず、一行日記や好きなことのメモなど、書けたことを褒めます。
- 環境を整える:学校に相談し、タブレット活用や板書の写真撮影などの配慮を検討します。
子どもにぴったりの「学びの場」を探してみる
家庭や学校での工夫に加え、専門的な知見を持つ「学びの場」を活用することも非常に有効です。
世の中には、発達特性を深く理解し、その子に合った「文章構成のルール」や「代替ツールの使い方」をマンツーマンで教えてくれる塾があります。適切な指導と環境があれば、子どもは「書く苦しみ」から解放され、本来持っている感性や思考力を自信を持って発揮できるようになるでしょう。
当メディアでは、東京エリアにある発達障害の子どもをサポートしてくれる塾を紹介しています。「うちの子に合う教え方」を知るための第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。


